韓江(ハンガン)さんが今年のノーベル文学賞に輝いた。平和賞を除いて長くノーベル賞受賞者がいなかった韓国では「国家的な慶事」と歓喜に沸いている。ともあれ大変お目出度いことだ。授賞理由に「過去のトラウマや目には見えない一連の縛りと向き合い人間の命のもろさを散文スタイルで浮き彫りにした」とあるが、そのトラウマとは1948年李承晩政権時に済州島で起きた暴動制圧のため死者6〜8万人、島の70%が焼き尽くされた虐殺事件。また1980年全斗煥が主導する軍部が民主化運動に参加していた学生や市民160人以上を弾圧虐殺事件で、それらを激しくも正確な筆致で散文として発表していた。
古来「散文的」と云えば、趣がないとか退屈な、平凡な、俗悪な、無味乾燥な、などの意味として使われ一段下に扱われてきたが、氏は高い文学性を維持して革新的な散文スタイルを確立したと評価されたのだ。ただ氏の多くの作品は韓国の歴史的汚点を描くことが多く(氏の意図することではなさそうだが)革新派から政治利用されることもままあった。日本でも大江健三郎が生涯にわたり体制批判、自衛隊全廃など極端な政治主張をしてノーベル賞を汚したと思っているが、そのような主張&活動には決して与しないように切に願いたいものだ。
10月 12
2024
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