日本被団協の受賞は喜ばしいが・・・

ロシアは核の威嚇を繰り返し、中国は核戦力を強化し、北朝鮮は核をおもちゃのように弄ぶ、核を隠し持つイスラエルとイランの対立が戦争寸前にある中で「日本原水爆被害者団体協議会」のノーベル平和賞の受賞は誠によろこばしい、が、政府と被団協の間には埋めがたい溝がある。
日本は核廃絶を訴えつつ現実には米国の核抑止力に依存するジレンマを抱える。政府は米国との緊密な連携で拡大核抑止力を維持しつつ核兵器国と非核兵器国の橋渡し役となることで将来的な核廃絶を目指す立場をとってきた。一方、被団協は核抑止政策そのものを認めておらず政府の抑止力維持の取り組みを厳しく批判してきた。「核兵器禁止条約」に関しても被団協が政府に参加を求めるのに対し政府は慎重な立場を崩していない。核廃絶を訴えた岸田ですら被団協の主張からは距離を置いてきた。一方、石破は米シンクタンクへの寄稿で米国との「核共有」の検討を提起するなどむしろ核抑止力の強化論者だ。ノルウェーのノーベル賞委員会のこの度の授与決定には日本政府への強烈な皮肉が込められていると思った方がいい。