細谷雄一 氏

安倍晋三氏への追悼文、かなり読んだ積もりだが、櫻井よしこ氏の「日本国の歴史的事実を誇りに穏やかながら雄々しい文化を身につけた安倍氏だったからこそ国際社会ではどの国の指導者にも位負けしなかった。そして国際社会で日本の地位をかってなく高めてくれた」の一文と共に若き細谷雄一氏(国際政治学 51歳)の追悼文は双璧だと思う。
・・・安倍氏の最大の功績は日本の外交・安全保障政策を戦後の「吉田路線」から「安倍路線」に転換させたことだ。吉田茂は安全保障を米国に頼り、日本は軽武装で経済成長を優先する路線を敷いた。歴代首相も継承し自立的な外交を抑制した。だが安倍氏は「積極的平和主義」を掲げ、日本の主体性を回復し、国際社会で指導力を発揮した。その外交は明治以降で最も創造的といえる。安倍氏は「インド太平洋」という新たな地域概念を創出し、日米に豪印を加え、民主主義国がアジアの地域秩序形成の中核を担うべきだと考えた。これで中国主導の潮流は一変した。平和安全法制など国論を二分する困難な課題に向き合った結果であることは論を待たない。
日本には外交を含め「闘わない政治」の文化がある。私は冷戦後、特に政治が困難な決断を回避し続けたことが日本の国力衰退につながっていると考える。困難で不透明な時代に、勇気ある安倍晋三氏のような「闘う政治家」の輩出と活躍を期待したい・・・