巷では「安倍晋三は一連の岸田人事に不満」との噂が絶えない。その理由を探るとこれが実に面白い。
岸田は事実上安倍が仕切る細田派に党三役の一角（総務会長）と内閣の要の官房長官を明け渡した。しかし細田派の源流は岸信介、その娘婿の安倍晋太郎から連なる「安倍系」と、岸を継いで福田赳夫を首相に推した清和会「福田系」の二つの系譜があり、岸田人事の総務会長は福田達夫、官房長官は安倍が推した萩生田光一ではなく福田系の松野博一を就けた。岸田はあえて安倍が眉をひそめる人事を行ったという見方にとどまらず、最大派閥の細田派を分断し党内のバランスを変えることで党改革を進めやすくする攻撃的な狙いがあると云うのだ。
もう一つ、二階は幹事長を辞める際に党副総裁の席を望んだが、岸田は二階の天敵である麻生を就けた。二階派の弱体化も狙っていたのだ。現に山口３区の公認は林芳正に決定し、二階派の番頭役河村建夫を新幹事長甘利と組んで引退に追い込んだ。なかなかやるじゃないか、岸田さん。