「中国にははっきりモノを言え」李登輝さんの遺訓

敬意を以ってもう一つ李登輝さんのエピソード・・・産経新聞元 台北支局長吉田信行氏が「李登輝さんの教え」という一文を載せた。
1994年3月千島湖事件、これは中国浙江省の千島湖で遊覧船が放火され台湾人観光客24人が焼死した事件で、中国側の人権無視の対応に遺族をはじめ台湾側が怒りを募らせたとき、当時の李登輝総統が「中国大陸は文明国家ではない」「土匪と同じだ」と輪をかけた怒りの談話を発表した。
台湾への武力侵攻を標榜する中国を相手にこの李登輝さんの強気の発言に対しさすがに懸念の声があがった。私は唯一の日本人特派員の特権で総統府で李登輝さんに直接真意を尋ねた。「あまり刺激しないほうが・・・」と言いかけたのだが李登輝さんはそれを遮るように「それはダメだ。相手に非のあるときははっきりモノを言う。これが中国人には効くのだ」の一点張りだった。その時は半信半疑で帰ったのだが、この直後、中国は掌を返したように刑事責任を全面的に認め李鵬首相が「犠牲者の遺族にお見舞いと哀悼の意を表明する」との談話を発表するに至り李登輝さんの読み筋通りの結末を見せた。外省人を通して中国人の何たるかを知り抜いた経験を持つ者のワザの冴えと言うべきものであろう。中国を刺激せずを以て尊しとなす、とする戦後日本にとって、これこそ以て李登輝さんの最大の教えではあるまいか・・・