人文の府たれ

入学者数が108人と定員割れに苦しむ新潟産業大。昨年秋に柏崎市を設置者とする公立大学化の要望書を市長に提出したが今だ承認されたという話は聞かない。多くの市民は「学生募集で行き詰った大学への救済措置ならば反対」と至極冷静に構える。確かに公立化したとて、それで学生が集まるというものではない。国際教養大学(秋田)の成功例で見る通り、いかに独自の魅力をつくれるかに掛かる。実はこの公立化が進むことを前提に昨秋、市と大学宛てに記念事業の提案書を書いた。その趣旨文の一部を以下に転記しておく。人格最低の文科大臣を頭に頂く限り教育の再生はないと思いつつ・・・

幸いにして貴学には碩学北原保雄先生が着任され、また当地には智の巨人ドナルド·キーンセンターが実在します。まさに他がうらやむ「人文学」の拠点です。一部には人文学をあくまで教養学で実学ではないとする論もありますが、否、現代社会に生じる文化的社会的諸問題に対処することのできる人間養成学です。よって地域を挙げて「人文学の府」であることを大いに周知喧伝していくべきだと考えます。
蛇足ですが、いま文科省は大学を職業教育の場として極端な理系重視の政策に舵を切り、文系学部が次々に整理廃止されていると聞きます。しかしどうでしょう、経済論理を優先した結果、科学者の人間性までもが問われたのがSTAP騒動だったはずです。
科学の前に、人間とは何か、社会はどうあるべきかを問い、先人の知識と知恵を継承し未来を構想するチカラを得るのが「人文学」ではないでしょうか。大学改革の名の下に文化破壊と知的荒廃が進んだら、まさしくそれは日本版文化大革命になってしまいます。繰り返します、だから今こそ「人文の府」は必要なのです。(2014年 秋)